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金曜キネマ Vol.119 『美しい星』 【横浜印刷会社のスタッフブログ】

不定期連載金曜キネマ。
第119回は『美しい星』
現在公開中の作品です。



あらすじは公式ページより転載。

■STORY
「当たらない」お天気キャスターの父・重一郎、野心溢れるフリーターの息子・一雄、美人すぎて周囲から浮いている女子大生の娘・暁子、心の空虚をもて余す主婦の母・伊余子。
そんな大杉一家が、ある日突然、火星人、水星人、金星人、地球人として覚醒。
「美しい星・地球」を救う使命を託される。
ひとたび目覚めた彼らは生き生きと奮闘を重ねるが、やがて世間を巻き込む騒動を引き起こし、それぞれに傷ついていく。
なぜ、彼らは目覚めたのか。
本当に、目覚めたのか??。
そんな一家の前に一人の男が現れ、地球に救う価値などあるのかと問いかける。

予告編はこちら→『美しい星』予告編

以前当ブログで三島由紀夫の記事を書いた時、少しだけ触れたこの作品。
「なぜ数ある三島作品のなかからこの作品を映画化したのか…」という謎を解き明かすために観て参りました(笑)

映画の前に、久々に原作も再読。
本棚の奥深くから発掘された文庫本はいい塩梅に古色がついて、古い本独特のいい香りがしました。

最近読み易いものばかりを読んでいたので再読にはだいぶ時間がかかってしまいましたが。
溢れ出る語彙、そして予測の出来ない言葉の連なり。
私の貧弱な語彙での表現だけだととり散らかった文章かと思われるかもしれませんが、それでいてどっしりと腰の据わった美しい日本語として成り立っているのが三島らしさといえるでしょうか。

さて映画は。

原作では中心に据えられていたのは米ソ冷戦の最中の「核の脅威」。
映画では「地球温暖化とエネルギー問題」に置き換えられています。
そして火星人・重一郎が目指すのは、「美しい星」地球を守る事。

省かれたキャストや変更されている設定も多々ありました。
中島朋子演じる伊余子(原作では木星人)はじめ、地球人もたくさん出てきますのでご安心を!(笑)

残念だったのは、個人的に好きだった部分がバッサリ切られていた処でしょうか。

重一郎が地球だけではなく、地球人をも守ろうとしていたところ。

文明としては三流としながらも、地球人とは愛すべき種族なのだと語る重一郎。
この星には守る価値があるのだと。

そして黒木との対決でも。
原作では討論の大切なパーツであった水爆の釦(ボタン)は、空虚な張りぼてとなって登場するだけでした…。
原作で黒木の一派である羽黒が重一郎を追い詰める、「どうやったって人類は水爆の釦を押す運命にあるのだ」というあの理論。
三島がこの作品において貫いている痛烈なこの世界への批判。
そして愛。(それでもどこかで人というものを信じている心、とも言い換えられるかもしれません)

また、重一郎の品格や一家が俯瞰して人類を見ながら感じている、宇宙人としての自尊心。

噛み砕いた分、それらの重みがなくなってしまった気がします。

人類を破滅に導こうとする黒木と、救済を目指す重一郎が対立する構図も曖昧になってしまったかと。

ただし。
不思議な事に、映画としては面白かったんです(笑)

原作未読でご覧になった方がどう観たのか気になってネットを徘徊してみると、多かったご意見はこうでした。

「意味わからない!! でも面白かった!!」

なるほど(笑)

私は原作から入っていたので、逆のことを思いました。

SFというジャンルに於いて異色な原作。
三島作品としても異色と言えるSF。
一言で言うと、あの突飛な設定の三島SFを、よくぞここまで噛み砕いたなぁと。
原作から考えると、離乳食レベルに噛み砕かれています。

音楽・映像も良く、映画としてキャッチーな作りになっているとも思いました。

重一郎はじめ一家のキャラクターはかなり「俗」寄りですが、あの原作を今の時代の映画としてまとめ上げるにはそれだけの分解と再構築が必要だったのかもしれません。
先に書いたように音楽も映像もいいですし、インパクトのある作りでデフォルメされて描かれるリリーさんの真剣さ、必死さが劇場の笑いを誘っていました。

三島原作作品としては少々物足りなさを否めませんが、良くここまで作品として成り立たせたと思いますし、映画単独としては楽しめました。

そこそこ突飛で難解な原作ですので、三島好きな方でなければ「是非原作を読んでからどうぞ」とはとても申せません(笑)
面白かったです。
是非純粋に映画として楽しんでください。

皆さま週末のご予定はお決まりですか?
たまには映画なんて、いかがですか?


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