金曜キネマ Vol.113 『妹の恋人』 【ブログ】

不定期連載金曜キネマ。
第113回は『妹の恋人』
1993年公開作品です。 

あらすじはこちら。

■STORY
幼い頃に火事で両親を亡くした兄妹ベニー(アイダン・クイン)とジューン(メアリー・スチュアート・マスターソン)は静かな片田舎で暮らしていた。
神経過敏で精神の安定を欠くジューンと、親のような気持ちで彼女の面倒をみるベニー。
気持ちが不安定になると無防備に火を使う彼女を家に一人で置いてはおけず、家政婦を雇うもジューンは過剰に反応し気に入らないと言ってはすぐに家政婦を追い出してしまうため、ベニーは日常生活すら穏やかに過ごせない。
精神科医はジューンを施設に預けるよう勧めるが決心できないベニーに、同僚のエリックはもっと自分の人生を大事にしろと忠告する。
ある日友人トーマスの家でポーカーに負けた兄妹は、そのツケで勝負の相手のマイクの家に居候しているいとこのサム(ジョニー・デップ)を引き取る破目になる。
サムは読み書きもできず、ほとんど口もきかない風変わりな青年。
だが不思議なことに、ジューンは彼を気に入って…。

20年以上前に、以前金曜キネマでもご紹介した『忘れられない人』と二本立てというぞんざいな扱いで公開された本作ですが(笑)ジョニー・デップが出演しているのでご存知の方も多いかもしれません。

一言で言うならとてもチャーミングな映画です。

心を病んでいるジューンと、読み書きができず一般的な常識があまり通じないサム。
そしてもう一人のメインキャラクターは、妹の事を大事に思っているけれど時に重荷に感じてしまうと同時に、そんな自分を許せない気持ちも持つ兄・ベニー。

とても可愛らしい作品なのですが、すべてが可愛らしい世界ではないところがこの映画のいいところ。
心の病についても適当ではなく、きちんと描かれています。
それぞれ真剣に生き方を悩んでいるし、愛情はあるのにうまく表現できずに四苦八苦している。
ふざけてはいけないところはキッチリ真面目に描いているんですね。
とはいえそこに関しては完全否定でも完全肯定でもないところに帰着するので、真面目でありながら重すぎはしません。
あと一歩の理解で、寛容さで物事は変わるかもしれない。
上手くいくかはわからないけれど、あと一歩あゆみ寄ったら違う世界が見えるかもしれない。
素直にそう思える展開で押しつけがましさがなく、いい落としどころなんです、これが。

病のせいで自分を認めてもらえず不満なジューン。
ジューンとの関係に葛藤するベニー。
人から「変わり者」と思われるような行動ばかりを取るサム。
そして、ジューンとサムが恋をした時のベニーの複雑な気持ち。
色々な要素が上手く盛り込まれていると思います。

全体を通して残る印象は、冒頭に書いたように音楽も描き方もどこかとぼけていてチャーミング。
また、ジョニー・デップがこの映画のチャーミングさを1.5倍くらいにはしているのではないでしょうか。
サムというキャラクターは映画が大好きで、読み書きはできないけれど好きな映画のセリフは丸暗記している程。
またバスター・キートン(アメリカの喜劇王)も大好きで、彼と同じような格好をしています。
恰好だけでなく大道芸はお手の物…というように、好きな事にはとても能動的なんですね。
まだ若く、今ほどいかつくないジョニー・デップが本当にサムという役にぴったりハマっていますし、大道芸のシーンで見せる芸達者さは一見の価値がありますよ。

もう一点。
私にしては珍しく、これは邦題が好きな作品です。
邦題っていらないサブタイトルをつけてしまったり、せっかくカッコいい作品なのに野暮なタイトルにされたり…だったら原題のままでいいじゃないか! と思う事が多いのです。
(洋画に変な邦題をつけられてしまった事態を、映画好きの人々は「邦題事故」と呼んでいます・笑)
が!! この作品の邦題はよくできていると思うのです。
原題は単純に兄妹の名前をとって『BENNY&JOON』。
もちろんこれもシンプルで良いのですが。
何となく通り過ぎてしまうと、そのタイトルの中に存在しているのは「妹」ジューンと「恋人」サムの2人だけに思えますよね。
しかし「妹」ということは、そこには確実に「兄」もしくは「姉」がいるわけで。
『妹の恋人』
ベニー・ジューン・サムを中心に描かれるこの作品に、このタイトル。
至ってシンプルなこのタイトルで、兄と妹とその恋人サムの存在がキッチリ表現されているのが天晴れです。

観た後はほんのちょっと先行きが心配にはなりながらも、ほのぼの幸せな気持ちになる本作。
気持ちの良いこんな季節にはぴったりだと思います。

皆さま週末のご予定はお決まりですか?
たまには映画なんて、いかがですか?


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