金曜キネマ Vol.118 『At the terrace テラスにて』 【横浜印刷会社のスタッフブログ】

不定期連載金曜キネマ。
第118回は『At the terrace テラスにて』
今年の公開作品です。(一部劇場で現在も公開中)

あらすじは映画.com先生にお任せで。

■STORY
緑に囲まれた豪邸で開かれたホームパーティ。
宴が終りを迎えようとする頃、帰ろうとしたデザイナーの斉藤と妻はる子を、屋敷の主人である専務夫妻が引き止める。
ほかに残ったのは、痩せた中年男と童貞っぽい会社員。さらに、専務の大学生の息子が帰宅してくる。
他愛のない会話が交わされる中、誰かがはる子の腕の白さを褒めたことをきっかけに、会話は思いも寄らぬ方向へと転がっていく。
はる子の「白い腕」をめぐってそれぞれが胸に秘めていた欲望や嫉妬、秘密が明らかになり、事態はやがて思わぬ展開を迎える。


今年観た好きな映画ベスト10入り確実。
(※個人の感想・ランキングです・笑)

これはほんっっっっっっとうに面白かった!
元となったのは本作の監督・山内ケンジ氏の舞台『トロワグロ』。
「元」とはいうものの、脚本・キャスト共に舞台から変わっていないそうです。
わかります…セリフ回しが、間が、ノリが、そのまま舞台のそれなんです。
映画館に居ながらにして最初の5分でもう、舞台のあの緊密な空気感を感じました。

かといって「舞台観た事ないよー」という方がアレルギーを起こすかというと、そんな事もないのではないかと思います。
とにかく間が抜けているようで腹に一物あるやりとりから目が離せません。

さて、どんな映画かというと。
ザックリ言うと、テラスという狭い空間で男女7人が織り成す、ほんの90分のワンシチュエーションドラマです。

出てくる場所はテラスのみ。
劇中に流れる90分という時間は、引き延ばしもされず、カットもされず、観ている私たちが過ごしているのと同じ90分。

「専務」宅で開かれたパーティがお開きになろうかというところから映画は始まります。
たまたまその場に残ったのは、大して関係性が深くもない男女4人。
デザイナー斉藤太郎、その妻はる子、童貞っぽいサラリーマン田ノ浦、大病を患って激痩せし、まだ復調しきっていないけれど参加した斉藤雅人。
そして、パーティの主催者・専務とその妻和美、息子の照夫。

社交界といった雰囲気の専務宅のホームパーティ。
そういう場で交わされる会話って、なんだか想像つきませんか?
みんなどこか一歩ひいていて、笑顔は絶えないのだけれど上滑りしているようなあの会話。
「相手の気分を害さない」
それだけが目的のような、ちょっと座りの悪いあの会話。
滑らかなようでいて、ちょっと腹の中のどこかがザワついている、あの会話。

はじまりは、そんな会話劇。

しかし、些細なきっかけでその予定調和の歯車が少しずつ少しずつ狂っていくんです。

「はる子の腕が白くて美しい」 そんな些細な褒め言葉がきっかけで。

あ、緊張感がある作品ではないので誤解なさらぬよう。
全編笑える作品です(笑)
爆笑ではなく、ニヤニヤしたり、クッと漏れるような笑い。
「面白い」というよりも「滑稽」、「可笑しみ」でしょうか。
どこかで見たような、聞いたような会話の様子がどんどんおかしくなっていく。

「はる子の腕が白くて美しい」
そんなきっかけで人々の、嫉妬や欲望、さらには表面を薄い布で覆ったような仮面の付き合いでは見えない関係性がさらされていく。

このはる子を演じているのは平岩紙さん。
好きな役者さんなんですが、正直言って彼女、そこまで美人ではないと思うんです。

しかし本作では本当に紙さんの魅力が際立ちます。

やたらと褒められることで苛立つはる子が、CDをかけ、踊りだすシーンがあります。
タガが外れたように。
まとわりつくねっとりとした空気を振り払うかのように。
しっかし、そのシーンがまたはる子の魅力を引き立たせてしまうこの皮肉。

笑えて、皮肉で、黒い。
そんな90分の会話劇。

そしてラスト。
何とも言えない終わり方をします。
危ういバランスを保っていたようでもあり、とっくに崩れていたようでもある場の空気を、ドロップキックで蹴り飛ばすようなラスト。
しかし崩壊であると同時に、爽快にすら感じる「収まった」感のあるラスト。
(↑個人の感想です・笑)

鑑賞後すぐには、この爽快感の正体がわかりませんでした。
あとを引く作品で鑑賞後つらつらと思いだしていたのですが、翌日ふと、その爽快感の正体に思い至りました。

日頃の人間関係に潜む、とっくに崩れている関係。
しかし、日常生活の中でそれをグッと飲みこんで、取り繕っている関係。
そんな人たち、見かけませんか?
仲が良さそうで実はそうでもなかったり、むしろ嫌い合っていたり。
大して興味もない人同士の、取り繕うような同意ばかりの上滑りの会話を聞いたり。

日常として受け入れているけれど、その場に入れば自分もその体(テイ)に合わせるけれど、正直ちょっとうんざりしている。
そんな人間関係。

それをブッ飛ばしてくれた爽快感でした(笑)

そして結末とは関係なく、観た方全員「斉藤雅人、いいからお前は早く帰れ!」と5回は思うはずです!!
この斉藤雅人の存在がとてもこの映画を象徴していることにあとあと気付き、さらにこの作品が好きになりました。
あわよくばもう一度観に行きたいと思っていたのですが近場での上映は終了してしまったので、私は現在DVD情報を待っています。
DVDが発売されたら絶対に買います。

というわけで、取り繕った人間関係にうんざりしている方必見!!(笑)
これはほんっっっっっっとうに面白かったです!

是非!!


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